食事の学び・栄養学
トレーニングの成果は、食事でつくられる部分がとても大きいです。
基本の考え方から、少し専門的な指標まで、実践的にまとめました。
目次
三大栄養素(PFC)の役割
食事の基本は、【P(タンパク質)・F(脂質)・C(炭水化物)】という3つの栄養素をバランスよく摂ることです。それぞれ、体の中で果たす役割が異なります。
P:タンパク質(1gあたり4kcal)
筋肉・皮膚・髪・ホルモン・免疫細胞など、体のあらゆる組織の材料になります。トレーニングで傷ついた筋繊維を修復し、より強く作り直すためにも欠かせません。
F:脂質(1gあたり9kcal)
ホルモンの材料になったり、脂溶性のビタミン(A・D・E・K)を吸収する助けをしたりします。細胞膜の材料でもあり、極端に減らすと体調を崩しやすくなります。
C:炭水化物(1gあたり4kcal)
体と脳の主要なエネルギー源です。特に高強度のトレーニングでは、筋肉内のグリコーゲン(糖の貯蔵形態)が主なエネルギー源になります。
PFCバランスの目安
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人の目標として、摂取エネルギーに占める割合の目安が示されています。
これは健康維持を目的とした一般的な目安です。トレーニングを行っている方は、【筋肥大・減量の原理原則】ページでご紹介した通り、タンパク質だけはこの範囲より多く(体重1kgあたり1.6〜2.2g)摂ることをおすすめします。脂質と炭水化物の配分は、残ったカロリーの中で、ご自身の好みや体調に合わせて調整して問題ありません。
炭水化物とGI値
糖質制限のイメージから、炭水化物を極端に避ける方がいますが、トレーニングをする方にとって炭水化物は【パフォーマンスを支える主要な燃料】です。筋肉内のグリコーゲンが不足すると、トレーニング中の挙上重量や粘りが落ちやすくなります。
同じ炭水化物でも、食後の血糖値の上がり方は食品によって大きく異なります。この上がりやすさを示す指標が【GI値(グリセミック・インデックス)】です。GI値が高い食品は血糖値が急上昇しやすく、その反動でインスリンが多く分泌され、脂肪として蓄積されやすくなる、また急激な血糖値の低下による空腹感・眠気につながることがあります。
- 玄米・雑穀米
- そば
- オートミール
- ライ麦パン
- 大豆・大豆製品
- ほとんどの葉物野菜
- うどん
- パスタ
- さつまいも
- 玄米以外の雑穀
- バナナ
- 白米
- 食パン
- じゃがいも
- 砂糖・清涼飲料水
- 菓子パン
減量中であっても、炭水化物をゼロに近づけるより、【摂取カロリー全体を管理した上で、低〜中GIの炭水化物を中心にする】方が、空腹感をコントロールしながら結果を出しやすくなります。トレーニング前後は、体が炭水化物を活用しやすいタイミングなので、この時間帯に限っては高GIの炭水化物(白米など)を使っても大きな問題にはなりにくいです。
脂質の種類と選び方
「脂質=太る」というイメージから、極端に脂質を減らす方もいますが、脂質はホルモン(テストステロンなど、筋肥大に関わるホルモンを含む)の材料になるため、減らしすぎると体調やトレーニング効果に悪影響が出ることがあります。ただし、脂質にも種類があり、選び方で体への影響が変わります。
| 種類 | 多く含む食品 | ポイント |
|---|---|---|
| 飽和脂肪酸 | 肉の脂身、バター、ラード | 摂りすぎると体脂肪や血中脂質が増えやすい。適量にとどめる |
| 一価不飽和脂肪酸(オメガ9) | オリーブオイル、アボカド、ナッツ類 | 体に良い影響が知られている。積極的に選びたい脂質 |
| 多価不飽和脂肪酸(オメガ3) | 青魚(サバ・イワシ・サンマ)、えごま油、亜麻仁油 | 体内で作れない必須脂肪酸。積極的に摂りたい |
| 多価不飽和脂肪酸(オメガ6) | サラダ油、大豆油、コーン油 | 必須脂肪酸だが、現代の食生活では摂りすぎる傾向がある |
| トランス脂肪酸 | マーガリン、ショートニング、一部の加工菓子 | 体への悪影響が指摘されている。できるだけ避けたい |
タンパク質の質を見る「アミノ酸スコア」
タンパク質は、体内で作れない9種類の【必須アミノ酸】がバランスよく含まれているほど「質が良い」とされます。このバランスを100点満点で評価した指標が【アミノ酸スコア】です。
| 食品 | アミノ酸スコア | 備考 |
|---|---|---|
| 肉類・魚介類・卵・牛乳 | 100 | 制限アミノ酸なし。動物性タンパク質の基本 |
| 大豆・納豆・豆腐 | 100 | 植物性でありながら「畑の肉」と呼ばれるほど優秀 |
| きのこ類 | 100 | 低カロリーでタンパク質の質も高い |
| 白米(うるち米) | 93 | 穀類の中では比較的高め |
| 食パン | 51前後 | リジンというアミノ酸が不足しやすい(制限アミノ酸) |
重要なのは、スコアが低い食品を避けることではなく、【組み合わせて補う】ことです。たとえば白米に不足しがちなリジンは、味噌や納豆、卵などで補えます。「ご飯+納豆」「ご飯+味噌汁」「チャーハン(ご飯+卵)」のような日本の伝統的な組み合わせは、経験的にアミノ酸スコアを補い合う理にかなった食べ方だといえます。
ビタミンの働きと多く含む食品
ビタミンは全部で13種類あり、体内でほとんど作れないため、食事から摂る必要があります。水に溶ける【水溶性ビタミン】(B群・C)と、油に溶ける【脂溶性ビタミン】(A・D・E・K)に分かれます。ここでは、日常生活への影響が特に分かりやすいものを中心に、実践的に解説します。
ビタミンD VITAMIN D
骨の材料であるカルシウムの吸収を助けるビタミンとして知られていますが、実は【睡眠の質】にも関わっています。
ビタミンDは食事だけでなく、【紫外線(UV-B)を肌に浴びることで体内でも作られます】。窓ガラス越しでは生成されないため、屋外での日光浴が必要です。目安は、夏場なら10分程度、冬場はもう少し長め。日焼け止めは生成を妨げてしまうため、両立させたい場合は「手のひらだけ日に当てる」といった工夫もおすすめです。デスクワーク中心で日光を浴びる機会が少ない方は、特に意識してみてください。
多く含む食品:鮭、サンマ、舞茸・干し椎茸などのきのこ類
ビタミンB群(B1・B2・B6・B12・葉酸) VITAMIN B COMPLEX
糖質・脂質・タンパク質を、体が使えるエネルギーに変える「代謝」の現場で働く、いわば縁の下の力持ちです。
B群は水溶性で体に蓄積されにくいため、【毎日こまめに補う】意識が大切です。特定の1種類だけでなく、豚肉・レバー・卵・大豆・バナナなど、複数の食品から幅広く摂るのが実践的です。
多く含む食品:豚肉、レバー、卵、大豆、マグロ・カツオ、バナナ
ビタミンC VITAMIN C
抗酸化作用や、肌のハリを保つコラーゲンの合成に関わることでよく知られていますが、実は【ストレスへの対応】にも関わっています。
多く含む食品:パプリカ、ブロッコリー、キウイ、アセロラ
ビタミンA・E・K VITAMIN A / E / K
ビタミンAは目や皮膚・粘膜の健康を保ちます。不足すると、暗い場所での見えづらさ(夜盲)や肌の乾燥として現れることがあります。 ビタミンEは抗酸化作用があり、血流を保つ働きも報告されています。冷え性が気になる方は不足していないか見直してみてもよいでしょう。 ビタミンKは血液を固める働きと、骨の健康の両方に関わります。
多く含む食品:A=レバー・うなぎ・かぼちゃ/E=アーモンド・植物油/K=納豆・モロヘイヤ・わかめ
ミネラルの働きと多く含む食品
ミネラルも体内で作れない栄養素です。特にトレーニングを継続していると、汗とともに失われやすいミネラルがあるため、意識的に補う必要があります。
鉄 IRON
血液中で酸素を全身に運ぶ「ヘモグロビン」の材料になります。
ビタミンCと一緒に摂ると吸収率が上がるため、レバーやほうれん草にレモンやパプリカを添えるのは理にかなった組み合わせです。
多く含む食品:レバー、赤身の肉、ほうれん草、ひじき
マグネシウム MAGNESIUM
筋肉の収縮と弛緩、エネルギー代謝、神経の働きなど、300種類以上の体内の反応に関わる、縁の下の力持ちです。
多く含む食品:海藻類、大豆製品、ナッツ、玄米
亜鉛 ZINC
タンパク質の合成、ホルモンの生成、味覚を感じる細胞の維持に関わります。
多く含む食品:牡蠣、赤身の肉、ナッツ類
カリウム POTASSIUM
体内の水分・塩分(ナトリウム)バランスを調整します。
多く含む食品:バナナ、アボカド、ほうれん草、海藻
カルシウム・ナトリウム CALCIUM / SODIUM
カルシウムは骨・歯の材料であるだけでなく、筋肉が収縮する際の信号にも使われています。長期的に不足が続くと骨密度の低下につながるため、若いうちからの習慣が重要です。 ナトリウムは体液のバランス維持に必須ですが、現代の食生活では【摂りすぎる】方が問題になりやすいミネラルです。ただし、トレーニングで大量に汗をかいた日は、逆に不足して立ちくらみのような症状が出ることもあるため、極端に避ける必要はありません。
多く含む食品:カルシウム=乳製品・小魚・小松菜/ナトリウム=塩・味噌(摂りすぎに注意)
水分摂取の目安
体重1kgあたり【35ml前後】が、運動をしない日の一般的な目安です。トレーニングを行う日は、発汗量に応じてさらに500ml〜1L程度を追加で意識するとよいでしょう。
食事のタイミング
1日の総摂取量が同じであれば、食事の回数自体が結果を大きく左右するわけではありません。ただし、タンパク質に関しては、【1回にまとめて摂るより、3〜4回に分けて摂る】方が、筋肉づくりの材料として効率よく使われやすいことが分かっています。
トレーニング前後については、トレーニングの2〜3時間前までに炭水化物とタンパク質を含む食事を、トレーニング後はできるだけ早めにタンパク質を摂ることを意識すると、回復がスムーズになります。
減量におすすめの食材とその理由
減量中は「何を我慢するか」より「何を選ぶか」で結果が変わります。以下は、少ないカロリーで満足感を得やすい、代表的な食材です。
| 食材 | おすすめの理由 |
|---|---|
| 鶏むね肉・ささみ(皮なし) | 高タンパク・低脂質。少ないカロリーでしっかり満足感が得られる、減量期の主役 |
| 白身魚(タラ・カレイなど) | 高タンパク・低脂質・低カロリー。脂身の少ない魚は肉より低カロリーになりやすい |
| 卵白 | ほぼタンパク質のみで低カロリー。全卵と組み合わせて使うと調整しやすい |
| オートミール | 低GIで食物繊維が豊富。腹持ちが良く、血糖値も安定しやすい |
| ブロッコリーなどの緑黄色野菜 | 低カロリーで食物繊維・ビタミンが豊富。満腹感をつくりながら栄養も満たせる |
| きのこ類 | 超低カロリーながらアミノ酸スコア100。食感もあり満足感を得やすい |
| こんにゃく・しらたき | ほぼゼロカロリーで、料理のかさ増しに使える万能食材 |
| 豆腐 | 低カロリー・高タンパクな植物性食品。動物性食品と組み合わせやすい |
| ギリシャヨーグルト | 一般的なヨーグルトより高タンパク・低糖質。間食の置き換えに便利 |
① ビタミン・ミネラルが優秀な食材
減量中は食べる量そのものが減りやすいため、少量でも栄養密度の高い食材を選ぶことが重要です。
② GI値が低い食材
血糖値の急上昇を抑え、空腹感をコントロールしやすくなります。
③ 高タンパク・低脂質な食材
数値は可食部100gあたりの目安です。少ないカロリーでタンパク質量を確保できます。
④ 低カロリーで満腹感の得やすい食材
水分や食物繊維が多く、少ないカロリーでもしっかりとしたボリュームが得られます。
※ カロリー・タンパク質量は可食部100gあたりのおおよその目安です。品種や調理法によって変動します。
実践:日本の食材でタンパク質を摂る
特別な食材でなくても、身近なものでタンパク質は十分に摂れます。
特定の食品に偏らず、動物性・植物性の両方をバランスよく取り入れることをおすすめします。
サプリメントとの付き合い方
プロテインパウダー
「特別な薬」ではなく、食事で足りないタンパク質を手軽に補う【食品の一種】です。食事だけで必要量を満たせるなら、必須ではありません。忙しい日の置き換えとして活用するのが現実的です。
クレアチン
瞬発的な筋力・パワー向上に関して、数あるサプリメントの中でも比較的多くの研究で効果が確認されている成分です。ただし体質によっては合わない場合もあるため、気になる方は医師や専門家にご相談のうえで検討してください。
サプリメントはあくまで【食事の補助】であり、土台となる普段の食事を整えることが優先です。
極端な食事制限に注意
「炭水化物ゼロ」「脂質ゼロ」「1日1食」のような極端な制限は、短期的に体重が落ちて見えても、筋肉量の低下・ホルモンバランスの乱れ・強い反動(リバウンド)につながりやすく、長期的には続けられません。
栄養は「足し算」で考えるのが基本です。何かを完全にゼロにするのではなく、【必要なものを、必要な量だけ】整えていく意識で取り組んでいただくのが、結果的に一番の近道になります。
食事の土台ができたら、次は運動の原則です
「筋肥大・減量の原理原則」ページでは、トレーニングボリュームや
プログレッシブオーバーロードなど、体づくりのもう一つの土台を解説しています。